にちじょう。えそら。

この度、日常とエソラが合体!創作もします。アニメ、漫画、アーティストさんの話します。ごゆっくり見ていってください!

第十六話 狂犬

「被害が出たぞ!」
隊長が部屋に入ってきた。
まだくるみと同じあの部屋に居た。
もう完全復活!まだ頭の傷は塞がってはないが。動くには支障はない。
「被害って、黄泉犬のっすか!」
うなずく隊長。とうとう恐れていた事態になってしまったのか。
今は早朝、まだ日は出てない。
だからまだ、くるみは寝ている。昨日の態度にはすこし驚いたけど、くるみも混乱しているようだった。
「安静にしていろよ」
なんだろうか、この気持ち。この寝顔の懐かしさ。くるみと一緒に寝たのはこれが初めてなのに。俺にない記憶がなにか関係しているのだろうか。こいつに昨日みたいに接されると悲しい。あんな辛い顔見たくない。なんだか我慢しているように感じた。何か、隠してるように感じた。でも、聞き出すのよそう。本人から話さないとダメな気がする。
「俺がくるみの辛さの力になれるかわかんないけど、今は休んでいてくれ」
ぽんっと、卓斗はくるみの頭を触った。
そして、卓斗は隊長のあとを追って、部屋を出た。
ーガタン。
ドアが閉まる音がなると、くるみは目を開いた。

被害者の男性は頬にひっかかれた後があった。
驚いて尻餅をついて痛いという二つ以外はけがはせず、軽いもので済んだ。
男性の証言によると、暗かったため容姿はわからないが、逃げた方向は見たという。
その方向には男性のと見られる血液が点々と、道になっていたため検討はついた。
男性をひっかいた際に、犬に血液がついて走って地面に足がつくたび、そこに血がついたのだと思われる。
あの家に黄泉犬はいる。

ーピンポーン
『…はい。どちら様ですか』
黄泉がえりの隊長、竜也というものですが」
ーガチャ
と、扉が開く音がした。ドアから女性が顔を出す。
「あれ?あなたはこの前の…」
そういうと女性は顔を一瞬しかめたが、すぐに笑って
「どうかなさいましたか?」
「実はこの前の事件と同じような事件がこの近くで起きまして、被害者の血を頼りにたどるとここにたどり着いたものですから」
「…」
「あなた、動物飼ってらっしゃいますね?」
「はい」
「見せていただけませんか?」
「どうしてですか?私の子が、チャイがやったと疑っているのですか?」
女性は反抗する。確かに血液がここに続いていただけで、他には証拠がない。
しかし、隊長も反論する。
「あなたの犬がやってないのなら見せられるはずではないですか?」
女性は言葉が詰まる。諦めて、犬を連れてくる。
被害者をひっかいたと思われる爪は切られて、綺麗になっていた。しかし、傷があるらしく包帯を巻いていた。
「この傷はいつどこでついたものですか?」
「わかりません」
「たぶん、これ。俺がつけた傷かもしれないっす」
卓斗は不意に襲われた時に犬に持っていたナイフで無意識に刺したのだという。
「でも!確かではないんですよね!かもしれないって!だから、チャイじゃない…」
…ガルルルルル
「⁉︎」
犬は唸り始めた。そして、女性の手を噛もうとした!
『犬を取り押さえて!』
イヤモニから梓の声が聞こえて、卓斗は犬を抱きかかえ、用意した檻に入れた。
なんでこうなったのか、わからない女性は困惑した様子で犬を見ていた。
「どうしたの?チャイ!嘘よ!チャイが人を傷つけるなんてそんなことあるわけないっ!」
女性は狂ったように叫び出す。
「決定的場面を私は見た。これよりこの黄泉犬の裁きを決行する」
「なにをするのっ!チャイを返して!チャイが死んでから、女手ひとつで育ててくれた母が死んだ!私はひとりぼっちになったの!やっと、再会できたのにまた私をひとりにするのっ!」
「この子はもう狂気に侵されているんです」
突然、女の子のこえがした。それはくるみだった。
「くるみ!どうしてここに…」
「あの子は今はもう狂気であなたの事は覚えていない。でも蘇った当初はあなたのお家へ帰れるほど、平常心であなたのことをちゃんと覚えていた。でも、今まで土の中にいて色々と怨念が溜まっていて、それがあの子を支配してしまった。この子は本当はいい子だってことわかる。でも、もうこの子はあなたの知ってるチャイじゃない」
くるみは黄泉の入口へ送る拳銃を構える。
「いや、いやっ!チャイー!」