にちじょう。えそら。

この度、日常とエソラが合体!創作もします。アニメ、漫画、アーティストさんの話します。ごゆっくり見ていってください!

第十七話 懐かしい…

ーガルルルルル…
「ほら、また唸ってる。もう支配されちゃったようですね」
犬は唸りながら、檻に体をぶつける。
外に出せと言わんばかりに抵抗する。
「この子をあなたは飼えるのですか?誰にも迷惑かけずに」
「チャイ、私のこと覚えているでしょ!さっきまでは静かにしてたのにっ!あなた達が来てからこうなったのよだから室内に飼っていれば大丈夫よ!」
卓斗はこの人が不憫でならなかった。目を伏せようと思った。しかし
「目を伏せるな。こんなことはこれから何回でもあり得るとこだ。しっかり目に焼き付けておけ」
と隊長から言われた。確かにそうだ。現実から逃げてはいけないんだ。
こんなこと何回もあったんだ。俺の知らない時に。くるみはだからこの年でこんなにしっかり対応している。
「そんなに言うのでしたら、今日はこの子を置いて帰ります。この子と今日を過ごして何もないなら、室内で飼うこと許します。」
そうくるみが言うと、今まで犬と一緒にいると言い張っていた女性は態度が変わった。
「嫌よ!こんな犬置いていかないでよ。私のチャイを返してっ!私の!私のチャイ…」
膝をがくりと落とし、泣き崩れていった。
「本当は蘇らなきゃ良かったんです。この子は。この世界がいけないんです。命の尊さを学べないから。こんな蘇る世界は終わらせなきゃいけないんです。そうしたら、この人はこんなに苦しむことはなかった。愛犬に忘れられることなんてなかった。忘れられるのってとっても悲しいですよね。ごめんなさい。きついことを言ってしまって、でもそれが現在の現実なんです。この世界の未来にはこの現実が変わっていればいいなと私は思います」
くるみは言い終わると、銃を俺に渡して来た。
「今日はあなたがやってみてください」
卓斗はいつもくるみにこの仕事をやらせていた。
だから、今日初めてやってみる。
くるみは女性の肩を抱いている。女性はやはり変わってしまった愛犬でも撃たれてしまうため、涙を流している。
もう、二度と蘇ることはない。永遠の別れなのだ。
「では行きます。」
まだ檻の中で暴れつつある、黄泉犬。
檻越しでもこの銃は効くらしい。目は黄泉犬から逸らさず、引き金をひく。
バンッ‼︎
目の前にいたはずの犬は消えていた。
「チャイはどこに?血とか死体は?」
初めてみた時ならこんな反応だろう。卓斗も最初はそうだった。
「黄泉の入口へ送られたんだ」
隊長が説明した。
「そうなんですか。ごめんなさい、私殺されてしまうのかと思って、なんだかわかんなくてこんなに取り乱してしまって、本当にご迷惑おかけしました。」
「あなたは何も悪くないです!1度にいろんなことがあって、混乱するのは当たり前です。なにかあったら、相談してください。黄泉がえりには他に2人いて、相談にのりますから」
「あなた若いのに、しっかりしてるのね。いろんなこと経験してるからあんな立派なことが言えるのね。私もあなたの力になれれば、なりたい。お名前は?」
「くるみです」
「私はみどり」

次の日。
「ぜひ!料理教えてください!」
「いいわよ!でも、そんなすごいものじゃないからね笑」
「私も!野菜のサラダのバリエーション増やしたいのでっ!」
「まかせてっ!」
なんだか賑やかな食堂。
「あれ?みどりさんさっそく来たんすか?」
「うん。悲しいことを癒すにはやっぱり人と話すことだと思うの!とっても楽しいわ、ここ。」
「良かったっすね!」
「ここで過ごす時間、大切にするのよ。卓斗くん」
「はいっ!」
みどりさんの笑顔はとてもきれいだった。
なんだか初めて見た顔ではない。なんでだろう。最近、なにもかも懐かしいと思うようになってきた。
なんでだろうか。俺はなんで記憶がないんだ。思い出したい。もやもやする。
でも、今思い出しかけてきている。あともう少しで思い出せる気がする。