叶斗も、能力者だと…!?
そして、その能力が人の心を操るもの?
「!?確かに今私の本当の気持ちじゃなかった…シンに言われなかったら、同意していたかも」
「隊長、もくるみさん…も、もう…操られている」
そうか、だから意見が変わったんだ…
「邪魔しないでくださいよ…」
黙っていた叶斗が口を開く。
「あと少しだったのに、梓さん…」
吸い込まれそうな瞳…だ、だめ見ちゃだめなんだ!
「シンさん…でしたっけ?あなたも能力者なんですよね、いったいどんな力を持ってるんですか?」
「黄泉人の居場所を把握したり、黄泉人の目線になったり…」
「この組織のためにしか使ってないなんて勿体無い。対価まで払ったんでしょう?自分のために使わないとか僕だったらできないなぁ」
「はいっ!話はここまで、もう正体がバレたんだから、はやくここから出てきなさいよ!!」
「このままどっかいっていいの?あの2人あのままだよ」
その言葉にはっとなる、それはだめだ。
「2人を元に戻してからに決まってるでしょ!?」
「この組織を僕色に染めてあげようと思ったのになぁ、特にシンさんが可哀想だよ」
「なんだと?」
「話しにくくなることをためらわず、組織のために力を得るなんてどうかしてるよ、ここ。なんのためにそんなことしてるんだよ」
「…」
「自分のこと大事にしてあげてくださいよ、なーんて悪者が言うセリフじゃないけどね、ははっ」
一旦口を噤んで、真面目な顔になる。
「こんな、組織に入るなんて、うそだよ、嫌いだこんなとこ。断ってくれてどうもありがとう、じゃーね」
そう言うと、走って逃げってった。
「ちょ…待ちなさいよ!隊長とくるみが!!」
「大丈夫だよ、梓…」
「私たちは無事です!帰ってきました!」
その声を聞いて、振り向くと先ほどとは違ういつも通りの2人がいた。
「よかった…」
床へ倒れこむ。
「弱いところをつけ込まれた感じがして、最悪でした…」
苦笑いする、くるみ
「く、くるみちゃん!!怖かったでしょう?」
ほろほろっと、自然にこぼれ落ちた。
「梓さん…心が痛いです、自分が自分じゃなくて、昔の頃に戻されそうで、心が…潰されそうで…辛くて…辛くて…だから」
「もう、何も言わなくていいから。落ち着いて、深呼吸、深呼吸よ」
久しぶりにみたくるみの涙。
そんな経験してるから、大人びてるんだ。心が強いんだ。
卓斗はくるみの強さを知った。でも、脆さも知った。
「昔話はおーしまい。思い出しちゃったな、もうあんな辛い思いはさせたくない。今回の案件…絶対辛いから、でも負けないから!」
決意をする、梓。俺もしっかりしなきゃな。
「辛いことまで話してくれてありがとうです。」
「例の男、最悪な奴だったということはわかってもらえたから、許さないでしょ?」
「はい!許すまじっす。くるみのパートナーに俺はふさわしくないかもって思ってたけど、そいつよりは少しましなんじゃないかと思います」
そんなことない、立派なパートナーよ。理想で、憧れで、期待で…
きっと、あなたが思い出してくれたらあの子の本当の笑顔が見られる。もう涙なんて見なくて済むんだよ。はやく、だからはやく気づいてあげて…