にちじょう。えそら。

この度、日常とエソラが合体!創作もします。アニメ、漫画、アーティストさんの話します。ごゆっくり見ていってください!

第二十六話 緊張と不安と

ターゲットが蘇る1時間前。

緊張を和らげるため、腹が減っては戦はできぬため。

みどりさんが持ってきてくれたお弁当をみんなで食べる。

「私はご飯を作ってあげられることしかできないから」

そういうみどりさんだが、充分だ。これから動き出すためには食は必須だ。

 

時計がカチカチと出動時間までの時を刻んでいく。

心臓の鼓動がそれに合わせて動いている。

なんでこんなに緊張しているんだろうか。いつもより黄泉人がひとり多いだけなのに。

不安なのか。自分で立てた作戦が。

卓斗は自室で準備をしていた。

イヤモニの充電は満タンだ。凶暴な奴かもしれないからナイフも隠しておく。

黄泉へ送る魔法の弾、拳銃は念入りに磨いておく。

―コンッコンッ

「はい」

扉を開けたらくるみがいた。

「どうした?」

「一緒に準備していいですか」

「…お、おう」

くるみも不安なのだろうか。黄泉犬の時みたいにシンは辛そうじゃなかったから手ごわくはないとは思うんだが。一気に二人相手は難しんだろうなぁ。きっと。

特に会話はすることなく、真剣に準備していた。

だから、気づかなかった。くるみがずっと俺のことを見ていたことを。

 

「こんだけやれば、大丈夫かな!」

あんまりにも声を出してなかったからすこししゃがれた声が出た。

そこでやっとくるみの視線に気づく。

「?どうした?ここにきてからなんか変だぞ」

「なんか今日、とっても不安で、いつもはこんなんじゃないのに」

「俺も不安だ、もしかして不安がうつっちゃったかな」

落ち着かないと!と乾いた笑いをする。

今日はあなたとは違う緊張からくる不安だ。

失敗したくない、これからの未来のために。

 

『ではいいか、二人とも』

蘇るまでもうすぐ。

イヤモニからの声に集中する。

「はい!」

「大丈夫っす!」

『一人目の黄泉人は今いる商店街にいます』

夜だから活気はないが、こんなところに死体があったらだれか気づきはしないのか。

…その考えはこの世界ではもう失われているか。

「了解」

「こういうところだと路地裏とかが怪しそうですね」

目を凝らして、いたるところを確認する。倒れこんでいる人はいないか?

暗いから余計に見つけづらい。

あたりは静まり返っている。

なのに、俺の心臓の鼓動だけはうるさく鳴り響いている。

二人蘇るが、まずは一人。

「卓斗さん」

呼びかけられて、我に返る。

「大丈夫です、深呼吸です」

よくドキドキしているとき、梓さんにこう声をかけてもらいましたと笑顔で語る、くるみ。

俺の気持ちを察して、緊張を紛らわしてくれようとしているのだろう。

何やってんだ、俺。俺がしっかりしないと。

「ありがとな、くるみ」

くるみの頭にそっと触れる。

そうすると、くるみの手が添えられた。

うつむきながら、こう言葉を発した。

「もっと、なでて」

くるみからそんな言葉がしかも敬語じゃない。

でも、体は勝手に撫でていた。拒む時間なんてなかった。

体はやはり何か覚えているのだろうか。

がさがさ

物音が聞こえる。

そして、イヤモニから声が。

『…蘇りました!』

―どこだ!?

焦りはじめる。物音がする方に目を向けた。

 

「いた!」