「そういえば、名前を名乗っていませんでしたね!僕の名前は、叶斗(かなと)よろしく!くるみちゃん」
かな…と。なんなんだろう、不安感に襲われる。この人は危険だって、私の感覚が私に言っているような気がする。初めて会った時から、震えている。怯えているの?私は。くるみは怖かった。自分でもよくわからないけれど、不安だった。
「どうしたの?くるみちゃん」
「あ、いえ、よろしくお願いします」
「どうしてですかっ!?隊長!!」
梓は、机をバンッと叩いて叫んだ。
「くるみちゃんを…まだ善悪のわからない黄泉人と行動班にさせるなんて!!」
「いやすまんすまん、押しに弱くて…熱心に働きたいみたいでさ。善悪決める判断材料にもなるかなと、あと人手足りないしさ」
「私、足もうほぼ治りました…!今から行動班に戻ります!!」
「本当か?我慢してないだろうな、まあ行動班は多いだけいいか」
「2人は今どこですか??」
「地下の奥の部屋に、あそこ一応黄泉人の隔離場所だからな」
と言い終わらぬうちに梓は駆けていった。
梓が心配するのは無理はない。泊めさせて、観察するつもりだったが、働かせるのはまずかっただろうか。でも、いい奴に俺は見えるんだ。少し、怪しそうな雰囲気はあるけれど…
隊長はいつもそう、勝手に自分で決めてしまう!意気込んで走っていたものの、足がだんだん、ズキズキと痛んできた。く、何でこんな時に、治ったと思ってたのに。くるみちゃんは私が守らなきゃ!!
時間をかけながらも、目的の地下の1番奥の部屋にたどり着き、勢いよくドアを開ける!
「くるみちゃーん!!!」
「はい、なんですか?梓さん」
くるみと叶斗は7並べをしていた。
「何してんの!黄泉人は離れなさいっ!!」
「えぇ〜ひどいよ!遊んでるだけじゃない〜」
梓はトランプを持っていたくるみを叶斗から引き離す。そうすると、くるみの手からカードがバラバラと落ちていく。
「とにかくダメ!あなたは黄泉人じゃない!善悪判断されてないんだから、安易に近づくんじゃない!!くるみも気をつけて」
くるみ、呼び捨てで呼ばれたことに驚いたが、相当怒っているんだということが伝わってきた。
「梓さん、大丈夫ですよ。さっきは怖かったけど、もう大丈夫だから…」
優しい微笑みで見つめられる梓。
くるみがそこまでいうのなら、仕方ない。
「でも、私はあんたを信用したわけじゃないから!…いった…」
今になって、足が痛くなってきた。
「梓さん!まだ足が治ってないのに!!」
「違うわ!痺れただけよ!いっ…もう治ったんだから!早くこいつをここから出てってもらわなきゃ!」
「そんなぁ〜まだ来たばっかなのに、でも、今安静にしないとこれから一生治んなくなってしまうかもしれませんよ?そうしたら、僕を追い出せなくなっちゃいますよ?いいんですか?」
嫌な奴だと思っていた。いや、今もそう思ってる。だけど、気遣ってくれている。いい奴なの?くるみちゃんも信用してるし、本当はいい奴なんだろうか?
「そうですよ!梓さん!私のことは大丈夫です!自分の心配をしてください!」
くるみに言われては仕方ない。梓は安静にしようと思った。そして、早く治してやると。
「早く治して、すぐに行動班に戻るからね!それまで、あんたに任せるわ」
「はーい!かしこまりです!あ、それとあんたじゃなくて僕は叶斗ですよ!よろしくです〜あずささぁーん」
ムカつく喋り方…と思いつつ、明るい奴なんだなぁと思った。くるみちゃんは冷静沈着だから、こういう明るくておちゃらけた感じのやつとコンビを組んだら、バランスがいいのかもしれない。でも、心配だ。くるみちゃんは外から来て、本当は外にも出すのは嫌なのに。私が守らなきゃって思ってたのに。こんな奴に任せるしかないなんて。くるみちゃんのことは頼んだわよ!そう思いながら、梓は部屋を出た。