にちじょう。えそら。

この度、日常とエソラが合体!創作もします。アニメ、漫画、アーティストさんの話します。ごゆっくり見ていってください!

第三十一話 まだかけている記憶

「一番風呂ありがとう、気持ちよかったよ」

ほかほかと蒸気を出して、お風呂から上がってきた。

「よかったわ!ご飯はもうちょっと待っててね、先にお父さん入ってくれば?」

「うー、今いいとこ。これ見終わったら行く」

久々のテレビにくぎ付けな、父だった。

「さっさとしてね、出来たらみんなで一緒にご飯食べるんだから」

「はーい、よし入ってくる」

「父さんはテレビっ子だな」

「生前はテレビなんてそんなに見てなかったけどね、今までの分見てるのかしら」

本当、私も旦那も仕事命だったからねーと言いながら、お鍋をぐるぐるかき混ぜている。くんくん、この匂いは…

「カレーライスよ」

「お、うまそー!ご飯は炊けてる?よそうよ」

「あら、いーの?優しいじゃん、どこでそんな気遣い覚えたの?」

「気遣いって!あっちでは当番制でご飯作ってたんだよ」

「ほんとに!?今度作ってよー」

「いいけど、結構鍛え上げられたからね!母さんよりうまいかもよ?」

「お!いってくれるわね!ま、今日このカレーを食べれば力の差に気づくわよ」

カレーライスそんなに自信作なのか??

「母さんはカレーライス作るの得意だからな!俺もそれで胃袋を射止められた」

いつの間にか風呂から上がっていた父さんが会話に参戦してきた。

「ご飯だけじゃないでしょ!かわいいところもよね!」

「それ自分で言うかー??」

食卓を囲む前からにぎやかな会話。仕事ばっかりしてて構ってられなかったと聞いていたけど、全然そんな感じしない。

「いただきまーす」

母さんの自信作カレーのお味はいかに?

「ん!?」

「どーお?」

「んまい!!」

「だろー?」

なんだこれ、カレーって誰もが食べる定番料理。そして子供が喜ぶ料理だ。何度も食べたことがあるのに、何か違う、めちゃうまい。辛さもちょうどいいし、具の大きさも食べやすいサイズ。

「これがお袋の味ってやつか!」

「そーよ!これには近づけても敵わないわよ」

これは勝負する前から敗北だ。

「母さん、大口たたいてすみませんでした」

「えっへん!いーのよ!男はそれぐらい言わなきゃ」

男は大口たたいていいのか。

見栄を張るのも時には必要だな、張りすぎるのはだめだがな」

「そういうもんなのか」

見栄か…張ってきたような気もするな。

「ほんと夢みたい」

唐突に母さんが呟いた。カレーを見ながら、懐かしむ表情で。

「みんなでこうしてご飯食べるのって生前でも数え切れるくらいしかしなかったから、とっても嬉しくて、ちょっとはしゃぎすぎちゃった」

「仕事命の二人ともっとギスギスなるかと思ったけど、もしかして明るくふるまってくれた?」

「ううん、これがほんとの私たちよ。ただそれを見せる機会が少なかっただけで。だから卓斗が死んだときはこの世の終わりかと思った」

俺の死について、そっか二人よりも先に死んだから、知ってるのか!?

「それなんだけど、俺、記憶が回復してからもどうしても思い出せないことがあって…どうやって死んだのかなって」

「そう、その部分だけ思い出せないのね」

「よほど、自分の死がショックだったんだろうな」

二人ともなんだか言いずらそうにしている。

やばい死に方でもしたのかな?あ、でも生き返った体は特になんとも…

―ズキンッ

「!」

突然に頭が痛みだした。心は覚えてなくても体は覚えてるんだな。

「卓斗?大丈夫?」

「うん、ちょっと頭痛が…」

「今日はこれくらいにして、早く寝ちゃいなさい!明日も仕事なんでしょ」

「うん、わかったありがとう」

食べ終わったお皿だけ、シンクに並べてあとの片づけはおまかせした。

俺の死とこの頭痛関係あるのかな…

部屋のドアを開けるとそこには机と写真だけがあった。

「あれ?部屋間違えた?」

どうやらここは俺の隣の部屋だったみたい。

写真は頭が痛すぎてよく見えなかった。

まずい、早く寝ないと。痛みが強くなる。

なんとか、自分の部屋にたどり着き、ベッドにダイブ。

「いたい、なんなんだこれ」

明日までに治るかな。

いや、治ってもらわないと困る。みんなに心配かけたくないし、特にくるみには…