「…きてください、卓斗さん」
ん…誰かの声がする。来てください?どこにだ。
「起きてください、卓斗さん!」
はっ!っと声を上げながら、枕のなかに押し込んでた顔をガバっとあげた。
時間は、8と12に針を刺してる。つまり8時だ。
「ち、遅刻だ!!」
卓斗は、勢いよく布団から出て何かの準備をテキパキと手を休めず、流れるようにやった。
その勢いがこの言葉でピタッと止まった。
「何してるんですか…?卓斗さん」
その声の主はくるみで、冷めた目でこちらを見ていた。
「い、いやいや。これはだな、あの…その…」
だんだん顔が赤くなってきて熱いっ!それに比べくるみの顔は氷のように冷たい。
「た、体操だよ!体操、朝の体操さ…ハハハハ…」
「どう見たって、学校の用意してましたよ。遅刻とかいってたし…」
「それは、よくある条件反射ってやつ?時計見て8時で、ぎゃー遅刻だーみたいな」
「アニメの見すぎですね」
「俺は、黄泉人だぜ。アニメなんて見てねぇよ最近は、黄泉人になる前に見たのは、機動船隊ハヤブサかな?」
「…古い」
「あ!お前、古いって言ったな。お前に方がよく知ってんじゃねぇかよっ!」
ツインテールを揺らしながら、恥ずかしそうに後ろを向いたくるみ。
「…コホン、茶番はここまでです。さあ、朝食ですよ。食堂で待ってます…」
「あ、おう…」
俺、嫌われちまったかな…。
食堂は、まぁまぁな広さだった。ん、待てよ。食堂っていうからにはシェフがいんのか?
こんなたった5人くらいのために??
「今日の食事当番は…」
隊長がつぶやく。やっぱ、シェフなんていないか…。
「ベジタリアンでおなじみの、黄泉がえり指示班の梓でっす!!」
べジタリアンでおなじみじゃねぇよ!しらねぇよ俺は。
「おお、梓か。期待してるよ^^」
隊長が期待するほどだからおいしいのだろうか。てか、顔文字みたいのやめろ。
「おいしいのか?あの人の料理」
そっと、となりのくるみに聞いた。くるみはこちらの目を見ず淡々と答えた。
「慣れれば…」
やっぱ、俺嫌われちまってる…!!
シンは、相変わらず無言で、出来上がるのを待っている。…食事当番って交代やるのだよな??
シンが作る料理、全然想像できねぇ…。
ドンッ!
器が割れんばかりの音を立てた、目の前にはとても食用とは思えない色をしたスープが置かれていた。
「ゔっ…」
「新人くんにはサービスでーす」
周りよりスープの量が多かった。こんなサービス結構です!!
「これ食べられまs…」
「あ?なんか言ったか…コホンなにか言いましたか?し・ん・じ・ん・く・ん」
「あ、すいません。なんでもないっす…」
よそい終わった、梓が席に着いたところで、隊長が。
「さぁ、ではおいしそうなごちそうに…?」
どこがおいしそうなんだ。
「い!」
と隊長が言うと…
「ただきます!」
と三人(梓、くるみ、シン)がいった。
俺は置いてきぼりだった。だってさ、い!って言ったあとにただきますだぜ??おかしいだろう!!
なんだよ。ただきますって!!
「卓斗さん、せっかくつくってくれたのに食べないと失礼ですよ」
でもさ、ちゃんとみようよ。この色、食えるかっての!!
「もしや新人君、ビビってんなぁ~。色だけに惑わされないよーに」
「そうだぞ、卓斗!食べないと力はいんないよ!」
「…おいしいのに」
最後にしゃべったのは、初めてしゃべったシンだ。だいたい、字が小さいからわかりやすいぞ!ってそんなことより!そういや、お前らなんでこんな得体のしれないもん、飲めるんだよ!!
でも、色だけに惑わされるなって言ってたし…
もう、仕方ない!腹減ったし飲むしかない!!あとは水飲めば何とかなる。ご飯食えば相殺されるかも知んない!!よッしゃ、飲んでやるぜ!俺!
ズズーッ。
・・・・・・・!?
「…うめぇ」
「お、新人君飲んだか!?どう?おいしいでしょ?」
「はい、とてもうまいっす!」
感動した。こんなにうまかったなんて。恐るべし梓先輩!!
「じゃ、明日は新人君が食事当番だからっ」
カレンダーに指差す梓。そこには明日に日付に俺の名前がっ!
「えぇっ!まじっすか!」
「まじとも、まじとも」
「さて、卓斗君の腕前が気になるなぁ~」
「おいしくなかったら困りますけど…」
「クスッ」
今日初めて、くるみの笑顔を見てほっとした。でも、あしたの食事当番のことを考えると俺は今夜眠れそうにない…。