今日は俺は生き返った。ということはこの世界で他にも生き返った人がいるということだ。
シンは、その黄泉人を察知することができる。そしてこの組織に受け入れられてからすぐに俺の初めての仕事が始まった。
耳には指示班からの指示を聞くためのイヤホン。シンの声がきこえた。
「黄泉人は、路地裏のごみ箱で物色中です。」
「了解」
「卓斗、さん。さっきの作戦しますか?」
「そうだな。いくぞ、あそこのごみ箱だ!くるみ!」
くるみは笑った。優しく静かに、卓斗に気付かれないように。名前を呼ばれた。2年ぶりにその発音を聞けた。
嬉しい気持ちからの笑みだった。でも、その顔は、一瞬で真剣な顔に変わった。黄泉人の姿が見えたからだ。
がさがさとごみ箱を物色していた。
- 「売れそうなもんはごみ箱なんかにあるわけないか・・・」
カチャ・・・黄泉人の50代のおじさんは、自分のこめかみに何か冷たいものが触れたのを感じた。
とっさに両手を挙げる。
「ちょっと、落し物をしてしまってね。捕まえるには何もしてないでしょ。警察さん」
そのおじさんは後ろを振り返って驚いた。
「警察さん?あれ、私の知らないうちに国は警察を子供にもやらせるようになったのか?」
「私は警察ではありません。黄泉がえりという組織の一員です」
「その黄泉がえりとやらが私に何の用かね?」
「黄泉がえりという組織は、黄泉人―蘇った人を善か悪かさばくもの。あなたはそのどちら?」
おじさんは振り返った首を元に戻した。
「善人だよ。ってみんなそう言うだろうね。黄泉になんて連れてかれたくないからな」
「証明したいなら、おじさんの家に案内してよ」
それは、くるみの声ではなく卓斗の声だった。
「!?・・・驚いた、もう一人いたんだね。じゃ、僕を善人と判断するために僕の家に来てもらおう」
くるみは小声ではなした。
「あんまり、驚きませんでしたね」
「もっとびっくりさせようと思ったんだけどな」
イヤホンから梓の声。
「何やってんのよ!!ふざけてないでちゃんと仕事しなさい!!」
怒られた、二人。そんなこんなで、おじさんの家に着いた。
「ちょっとここで待ってください。家のひとに事情話さないと驚くでしょ?」
おじさんは、その家のカギを開けようとした。おじさんの背中でよく見えなかったけど、手こずっていた。
そして中に入り、カギをしめた。
「なんで、鍵まで閉めるんでしょう。そんなに入られたくないのかな?事情話すまで」
卓斗はイヤホンを耳の押し付け、ワイシャツについてたマイクに話しかけた。
「シン、このおじさ・・・黄泉人は、どこで倒れてたんだ?」
「路地裏」
「家族とかいたなら、そんなとこで死んでるはずないよな?」
「でも、死体がそんなとこにあったら、気付かれないかもしれないですよ。」
卓斗は、考えた。こいつは善人なのか悪人なのか。この家の中で何が行われているのか。